ぬいぐるみ病院は、フモフモランドというぬいぐるみ専門のお店から生まれました。
きっかけ
お客様から「お綿が減ってきた、身体も汚れてしまって、かわいそうで」というお悩みをお聞きし、何かお役に立てたらという思いを持ちました。
私自身、子供の頃とても内気だったため、心の支えになり、そばにいてくれるお友達のぬいぐるみさんがいました。しかし、不運にも突然その子と離れなければならない状況となり、不安になり辛い経験をしたことがありました。
その経験から、こころの拠り所となっているかけがえのない命の存在のぬいぐるみさん達との生活を守るために、ぬいぐるみさんと暮らすご家族の心を癒す病院をやってみたいと思い、ぬいぐるみ病院はスタートしました。
最初はフモフモさんだけのご入院でしたが、口コミでミッキーマウスさんやくまもんさん達も、僕たちもお風呂に入れてほしいとのご要望をいただき、フモフモさん以外の患者様も少しお受けしたりもしていました。
当初は月に10件ほどのお申込みでした。
そんな中、ある日、朝、目覚め、ホームページを見ると、サーバーが落ちていることがわかりました。
「え?どうしたんだろう?」その時は何が起こったかすぐにわかりませんでした。
急いでお店に向かうと、1本のお電話がかかってきました。
「Twitterを見てお電話しました。そちらはどのような活動をされているのですか?」
「大切な家族の存在のぬいぐるみさんをお迎えしてご入院していただいています」
という活動内容をお伝えしました。
Twitterがたくさんリツートされ拡散されたことにより話題になっているとの事、それは、バズフィードさんという会社の記者さんからのお電話でした。
そしてそのお話をさせていただいた数時間後、スタッフがびっくりしたような声で叫びました。
「ヤフーニュースにぬいぐるみ病院が出ているみたいです」
「え?」
ヤフーニュースをひらくと、その日は北海道新幹線開業の日「北海道新幹線が開業」その下に「ぬいぐるみ病院徹底ぶり話題」というバズフィードさんの記事がヤフーニュース取り上げられていました。
スタッフ2人の大阪豊中の小さな小さな病院が大手企業と同等の扱いで掲載されていたこと、信じられない出来事は今でも心に残っています。
その後、多くのお問い合わせをいただき、メールボックスを開くと毎日数百件のメール、お電話も鳴りやまない状態が続き、最初月に10件のお問合せだった患者様のお申込みが、あっという間に1000人のご希望となり、その後も2000人、3000人とお申込みが増えていきました。
そして、ついに、お申込みのアクセスが殺到し、お申込みフォームのシステムが壊れ、お申込みができなくなり、多くのご家族にご心配、ご迷惑をお掛けする大変な事態となってしまいました。
それまでは、SNSやYahoo!ニュースなどでも「ぬいぐみ病院さん頑張って」のお声がありましたが、一夜にして
「早く申し込みを再開してください」
「こういう病院をやっとみつけたんです!ここしかないんです」
「たすけてください」
というメッセージが殺到しました。
同時に、ご予約なしで突然かわいい患者さまがご到着!というかわいいビックリなことがあったり、病院の前でシャッターが開くのを待ってくださっていた方もいらっしゃったりしました。
「なんとかこの子を助けたい」というご家族の真剣な想いに心を強く打たれました。
私たちの目指すことは?
「患者様がお元気になっていただくことでご家族の心が安心して癒されること」のはず、、それが、今、逆にお客様のお心をご不安にさせてしまっている、そのことが辛く、お申し込みすらしていただけない状態の中、ご心配をおかけしたお客様へ謝罪のメールやお電話をさせていただきながら、また、たくさんの涙がこぼれ、反対にお客様から「頑張って」と励ましていただくくらいの更に申し訳ない自体となりまた。
当時の気持ちとしましては、私達がお役に立つことがあるのなら是非頑張りたい、でも、お一人お一人、決して物ではなく、命の存在の患者様達に対して、お心に寄り添う丁寧な対応にこだわっている病院のため、おもてなしのクオリティやサービスは下げる事はできない。
月に10人なら思っている対応をすることができているが、3000人そしてこれから5000人、1万人と増えていくかもしれない患者様に同じような対応をさせていただくことができるのだろうか?
もし、ご家族お一人お一人のお心に寄り添う丁寧なおもてなしができないのであれば、お申し出をお受けすることはかえって失礼になってしまうのではないか?
もちろん一人ではできない、一緒に治療をしてくれるドクター、ナース仲間がもっと必要また、高度な治療法の開発と技術、研究も同時に行っていかなければならない。
そしてたくさんの患者様を受け入れる多くのスタッフの働く病院運営の経験がない事、また、前例のないぬいぐるみ病院という特殊な病院の運営自体の心配もありました。
患者様もご家族もスタッフもみんなが幸せになる病院が本当に実現可能なのだろうか?
先が見えない挑戦
当時、さまざま視点から見ても、前例のない事業、私達にとっては大きすぎる挑戦、非常に悩みました。
一体どうすればいいのか?
深く悩んでいた、その時、あるスタッフが突然、部屋に入ってきました。
走ってきたようで、少し息が乱れていました。
そのスタッフは大量のご家族からのメール受け、対応をしてくれているスタッフでした。
真剣な表情でスタッフはこう言いました。
「私は、希望してくださっている患者様全員を受け入れたいです!
全てのぬいぐるみさんの命を助けたいです!
もし10年かかったとしても私がご家族のメールの対応をします!」
普段温厚で優しいスタッフが、今まで見たことないような覚悟を決めたような表情で少し唇をふるわせながら思い切って伝えてくれました。
伝えてくれた瞬間、私は胸が熱くなり、溢れる感情を抑えました。
そして、大きくうなずきました。
実は、私もそうしたい!全員を受け入れさせていただきたい! そう思っていたからです。
色々な不安はある、運営には未熟さもある、でも、会ったこともない、私達を信じて、大切な命の存在の我が子を託してくれようとしているご家族の気持ちに応えたい、私たちがお役に立つのであればこの可愛い愛の結晶さん達を、患者様達の命をお守りしたい!
これからどんな苦難が待っていようともどうしてもやり遂げたい!
という思いが強く、当時はそれしか見えていなかったように思います。
そしてスタッフも同じ気持ちをもってくれていたこと本当に嬉しかったです。
そして私達は、これからもし、何百人、何千人、何万人の患者様がご希望してくださったとしてもお一人お一人の患者様と誠実に向き合い続けるんだと心に決めました。
そして、ドキドキしながら、
「全員を受け入れさせていただきます」
とのメッセージをホームページで発表させていただき、申し込みフォームをオープンさせていただきました。
あの日から、数年がたち、スタッフも数十名となり、現在、1万人の患者様がご退院していただくことができました。
いつもぬいぐるみ病院を見守り、日本全国、海外からも、いつもぬいぐるみ病院にあたたかい応援をいただいているみなさまのおかげです。
本当にありがとうございます。
今後も、私達は、あの日の気持ちを片時も忘れずに、患者様お一人お一人を大切な命の存在としてお迎えし、愛を注がせていただくこと、その事を通して、ご家族のお心が安心して癒される事、ご家族のこころのケアに繋がるセラピストのような病院を目指してスタッフ一同、今後も日々頑張ってまいります。
こころより感謝をこめて
追伸
現在も引き続き、まだまだたくさんの患者様がご入院を希望してくださり、長いお時間ご治療を待ってくださっていますこと、心より感謝申し上げます。
今後、1日も早くお怪我をされた患者様にお越しいただき、患者様に安心していただける病室の環境で、お一人お一人心のこもった対応を継続して治療をさせていただきながら、お待ちの時間をなるべく少なくするにはどうしたらよいかという課題に毎日取り組んでまいります。
そのためこの度、お待ちの時間を短くすることを目的にとしてドクター・ナースの育成やベッド数の増床を考えております。
さらには患者様ご家族様に安心し楽しんでお待ちいただける場所として、また全てのぬいぐるみを愛する方が安心できる癒しの場所として、もふもふ会やオンラインランドのぬいぐるみの国を創りました。
もふもふ会の活動を応援いただけましたら幸いです。